医療法人マックシール 巽病院

腹水治療センター
KM-CARTによる腹水治療を行う部門

このページをご覧頂いている方は、腹水による不快症状でお悩みの方、もしくはそのご家族の方でしょうか。当センターでは、2泊3日の入院で「KM-CART(ケイエム・カート)」による腹水治療を行っています。
腹水を全量抜くことで不快症状を最大限緩和する治療法です。
専門のスタッフとともに、腹水でお悩みの方々の一助となれるよう尽力いたします。

医  師 高橋     臨床工学技士:神田、河合、米辻、山田、村越、近藤(順不同)
対象疾患 肝硬変、がん性腹膜炎などによる難治性腹水
特  徴 短期入院でKM-CARTによる腹水治療を行う部門です。

がまんしない、腹水治療

腹水が貯まると

  • ・お腹が張って苦しい
  • ・ご飯が食べられない
  • ・夜眠れない
  • ・上を向いて寝られない

などの症状が現れます。

そうなると、「なにかいい治療法はないか」、「腹水を抜いてもらえないか」と思われるのではないでしょうか。

しかしながら、腹水は「抜くと弱る」し「抜いてもまたすぐに貯まる」から、 “がまん” しなさいと言われることが多いのではないかと思います。

たしかに、腹水を抜いただけでは栄養状態は悪化していきます。進行した肝硬変やがん性腹膜炎の場合、腹水を抜いても1週間程度で症状がぶり返すこともありえます。

そうであれば、やはり “がまん” するしかないのでしょうか。
「いいえ、がまんする必要はありません。」

当センターでは、“KM-CART技術” を用いて腹水を “全量抜く” 治療を行っています(図1)。腹水を全量抜くことで不快症状を最大限緩和することができると考えます。

図1

  • 腹水を7530 ml抜水
  • 濾過濃縮後 670 ml 還元
  • アルブミンを65g 還元

CART(腹水ろ過濃縮再静注法)について

CART(カート)とは、抜いた腹水を専用のろ過器・濃縮器に通すことで腹水中の細胞成分(血液細胞やがん細胞など)と余分な水分を取り除き、必要な栄養分(アルブミンなど)を点滴にして還元する治療法です(図2)。

治療の対象は、肝硬変やがん性腹膜炎などによる難治性腹水です。この治療を行うと、腹水が抜けた分、楽になったと感じられるかと思います。 

しかしながら、腹水が大量の場合やがん性腹水の場合、CARTでは十分な治療効果(=不快症状の緩和と栄養状態の悪化防止)を得ることが困難となります。理由として、腹水を安全に全量抜くことができない、抜いた腹水をすべてろ過濃縮することはできないなどが挙げられます。

そのためCARTは、大量の腹水やがん性腹水に対する治療法として一般には普及していないのが現状です。

CART(腹水ろ過濃縮再静注法)図

図2

KM-CARTとは?

KM-CART(ケイエム・カート)とは、CARTの腹水ろ過濃縮方式に改良を加え、大量の腹水やがん性腹水を迅速・安全にろ過濃縮することを可能とした技術です(図3)。松崎圭祐先生(医療法人社団愛語会要町病院・要第2クリニック・現腹水治療センター長)によって開発され、2008年に報告されました。

改良点の1つ目は、腹水のろ過方法をCARTの内圧・定量ろ過方式から、外圧・定圧ろ過方式へ変更したことです(図中①)。それにより、腹水中の細胞成分に過度の圧負荷をかけることなく短時間でろ過濃縮することが可能となりました。

改良点の2つ目は、細胞成分によるろ過膜の目詰まりを取り除く目的で、CARTにはない “ろ過膜の洗浄機能” を設けたことです(図中②)。ろ過膜の洗浄操作をくり返し行うことで、大量の腹水やがん性腹水であっても抜いた腹水の全量をろ過濃縮することが可能となりました。

KM-CART図

図3

受診から治療まで

  • 1.当院のKM-CARTによる腹水治療をご希望の方は、主治医の先生に紹介状の作成をご依頼頂き、紹介元医療機関を通じて「腹水治療専門外来」(火曜日・木曜日午後)のご予約をお取り下さい。詳しくは「紹介患者様の診察予約について」(こちらをクリック)をご覧ください。
  • 2.受診予約日時に来院してください。このとき紹介状と直近の画像データをご持参願います。
  • 3.診察にてKM-CARTの適応があると判断した場合、入院予約を行います。
    原則として、2泊3日(月火水、火水木、水木金)の入院で治療を行っています。
  • 4.入院日は午後2時に来院してください。外来で血液検査と胸部レントゲン検査を行った上で入院となります。検査で脱水や低栄養を認めた場合、治療に備えて点滴や輸血を行うことがあります。
  • 5.入院翌日(治療当日)、朝から腹水を抜き始めます※。抜いた腹水は、その日のうちにろ過濃縮処理を行い、点滴にして還元します。
    ※腹水を抜くには1~3時間程度かかります。
  • 6.治療翌日、朝、体調確認と血液検査を行い、結果に異常がなければ退院となります。

 

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