医療法人マックシール 巽病院

外科

主な疾患の治療方針、手術方法


鼠径(そけい)ヘルニア

下腹部(鼠径部)の腹壁を支える筋膜・筋肉が弱くなり、腹圧によって鼠径管の間隙から腸管などが、腹膜(ヘルニア嚢)に被われて脱出してきた状態を鼠径ヘルニアと言います。鼠径ヘルニアには、外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアの2つのタイプがあります。

腸管の脱出が多いので、俗に「脱腸」と言われており、多くは手で圧迫すると腸管は腹腔内に戻ります。しかし、脱出腸管が戻らなくなると(嵌頓)、腸管が出口(ヘルニア門)で締め付けられて壊死に陥り、腹膜炎を生ずる可能性があります。自然経過やヘルニアバンドなどでは治癒することはなく、手術での修復が必要です。

手術は原則、入院していただき腰椎麻酔で行います。患者さんの年齢や全身状態によっては、局所麻酔、硬膜外麻酔、全身麻酔で行うこともあります。

鼠径部に約5~7cmの皮膚切開を加え、ヘルニア嚢という脱出腸管を入れた袋を剥離し処理します。現在ではその後、合成繊維でできた網状の人工物(メッシュプラグやプロリンヘルニアシステムといいます)をヘルニアの脱出口に挿入固定し、栓をして腹壁の補強を行う方法が一般的です。手術当日に入院していただき、術後の入院期間は約1-2日程度です。

痔核・痔瘻

痔核の治療には手術(切除術)、ゴム輪や糸による緊縛結紮療法、薬剤注入による注射療法等がありますが、当院では出血や脱出を伴う痔核に対して、ジオン注4段階注射療法と手術(結紮切除・半閉鎖法:ミリガンモルガン法といいます)を行っています。注射療法は基本的に局所麻酔のみで行い1泊2日の入院加療が必要ですが、翌日外来受診が可能な患者様であれば日帰り手術も行っております。注射療法の適応でない痔核の場合は手術治療が必要になります。手術を行った場合は、創部の状態によりますが、手術当日入院で術後2-7日目で退院が可能です。

痔瘻の手術には、瘻管を肛門括約筋切開して開放する手術(開放手術)と括約筋を切開せずに痔瘻をくりぬく手術(くりぬき手術)があります。どちらを選択するかは痔瘻の場所や瘻管の走行等を考慮して判断します。より複雑な痔瘻はシートン法といって、瘻管に細いテープを通して膿がたまらないようにして肛門機能を温存する手術を行うこともあります。手術当日に入院していただき、術後は創部の状態によりますが、2-7日目で退院が可能です。

胆石症・胆嚢炎

肝臓で作られた胆汁(消化液)は、胆管を通って十二指腸に流れます。

胆管の途中にある胆嚢に石ができた状態を、胆嚢結石症(胆石症)といいます。症状がない場合は通常経過観察をおこないますが、胆石発作(腹痛、発熱、黄疸など)を起こすことがあり、また胆嚢にある結石が胆管に落ちると総胆管結石となり、黄疸や重篤な胆管炎を起こすことがあります。胆石症に対しては胆嚢摘出術が最も根本的な治療法です。結石溶解薬(ウルソ)は、2~3cm以下の単発の純コレステロール結石に使用することもありますが、溶解するまでに数年を要します。

手術は腹腔鏡下手術で行います。ただ、胆嚢炎を併発して炎症が高度な場合は開腹手術に変更ないし当初から開腹手術を選択することもあります。手術当日に入院していただき、術後は翌朝から普通に食事が可能で、3日目頃に退院可能です。

胃癌

胃癌の根治的治療は外科手術ですが、進行度によっては術前・術後に抗癌剤治療を行うこともあります。術前検査でリンパ節転移が明らかに認められるような進行癌では術前に化学療法を2コース程度行ってから手術を行うこともあります。

手術は早期癌の幽門側胃切除では腹腔鏡下手術を選択いたします。進行癌や、早期癌でも胃全摘を必要とする場合は、手術の根治性や安全性の観点から開腹手術が学会でも推奨されているのでを当院でもその学会ガイドライン(http://www.jgca.jp/guideline/index.html)に沿って手術を行っています。

胃の2/3を切除する幽門側胃切除の場合、通常術後3日目より経口摂取を再開いたします。胃全摘の場合は術後4-5日目とやや食事の開始は遅れます。基本的には手術の前日に入院していただき、術後の入院期間は約10-14日程度です。

大腸癌(結腸癌)

結腸癌の根治的治療は外科手術ですが、進行度によっては術後に抗癌剤治療を行うこともあります。大腸癌治療もほぼ学会ガイドライン(http://www.jsccr.jp/guideline02_2.html)に沿って治療を受けていただいています。

外科手術は、早期癌はもちろん進行癌であっても当院では腹腔鏡下手術を第一選択としています。しかし、術前に腸閉塞があったり、他の臓器への浸潤が疑われるような大きな腫瘍の場合ははじめから開腹手術を選択します。結腸癌の場合、術後2日目より経口摂取を再開させていただき、術後の入院期間は約10-14日程度です。

最近は大腸癌の化学療法も大きく進歩し、たとえ肝臓や肺に転移があっても適切な治療を行えば延命期間は平均2年を超えるようになってきましたし、中には転移巣が消えてなくなってしまう患者さんもおられます。巽病院では外来通院で行う化学療法も積極的に行っています。

大腸癌(直腸癌)

直腸癌治療は外科手術が基本ですが、場合によっては術前に放射線療法や抗癌剤治療を行うこともあります。直腸癌の手術と聞いて、皆さんまず心配されるのが「人工肛門になるのではないか?」という点だと思います。

ここ数年、手術手技・手術器械が進歩し、肛門縁から腫瘍までが4-5cm程度であれば進行癌でもまず人工肛門になることはありません。早期癌であれば、さらに肛門に近くても肛門機能を温存する術式も開発されてきており、当院でも施行可能です。また、直腸癌に対しても腹腔鏡下手術を安全に行うことが可能で、小さな創で体に負担の少ない手術を受けていただけます。


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